呼びかけ

 福島原発事故が発生してから6年目を迎えようとしている今、9万人近い人々が依然として避難生活を続けています。

 長引く避難生活の中で、原発関連死が増え続け、仮設住宅での孤独死も問題となっており、将来への不安や、健康の問題、ふるさとへの帰還など、苦悩は絶えず増すばかりです。しかし、時間の経過とともに「記憶の風化」も進んでます。

 原発災害は、いまだに人々の人格権、生活権、環境権をはじめとするさまざまな人権を侵害しています。

 政府は、2017年3月までに、居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示を解除する方針を示し、各自治体は、「住民の帰還」のための取り組みを進めています。

 国は、年間20mSvを、避難指示を解除する場合の基準として、帰還困難区域を含む避難指示解除を目指しています。年間20mSvを、避難指示解除基準の条件にするのはどう考えても理不尽です。さらに問題なのは、避難指示の解除が賠償や支援の打ち切りとセットになっていることです。

 避難が長引けば長引くほど避難先で生活基盤を固める人が増え、帰還する住民が少なくなりますが、被災者一人一人がいかなる選択をしようとも、生活再建と賠償は、国と東電は責任をもって最後まで行うことは当然のことです。

「長期にわたる健康被害」に関する県民意識の現状はなお厳しいものがあります。とりわけ子どもの毎日の放射線被ばくを心配する気持ちを多くの人がもちながら生活しています。また、各家庭の敷地内に除染廃棄物が置かれたままになっており、早く運び出してほしいと訴え続けています。しかし、仮置き場や中間貯蔵施設の整備が進まず、いつ運び出してもらえるのか不安を募らせています。

 県民健康調査で、2巡目の子どもの甲状腺検査が実施されています。これまでに130人を超える子どものがんが検査で確認され、がんの疑いを含めると170人を超します。事故がなければ必要でなかった検査を受けなければならない身体的・精神的負担は甚大です。原発は国が国策としてすすめてきたもので、国が責任をもって治療を行うことは必然のことです。

 事故現場では、放射能汚染水の漏洩を抑止できない状況が続いています。さらに、溶け落ちた燃料の現況把握もままならず、事故の収束および廃炉作業は困難を極めています。

 一方、福島でこのような苦難が続いているのをよそに、鹿児島と愛媛の原発の再稼動がなされ、多くの原発で再稼働の準備が進められています。そこでは、地質、津波、設備の不備、住民の避難など、さまざまな問題において福島の原発事故の教訓がいかされていません。まるで福島事故がなかったかのように、避難計画もまともに作られないまま、粛々と再稼働に向けた動きが進展していくのを、黙って見過ごすことはできません。

 私たちは、立場や意見の違いを越え「原発のない福島を」をスローガンに行動してきました。福島県ならびに県内自治体の各議会は、「東京電力福島第二原子力発電所の即時廃炉」を強く訴えてきました。しかし、国は「第二原発の廃炉は事業者の問題」といい、東京電力は「広く社会の人々の意見と、国のエネルギー政策の動向等を勘案し、事業者として判断していく」との姿勢を続け、互いに責任を転嫁しあっています。

 第二原発の再稼働などあり得ません。私たちは、歴史的な被害を受けた福島県民の総意として「東京電力福島第二原子力発電所の即時廃炉を求める署名」を行い、国及び東京電力に対し、第二原発の廃炉を明言し、そのうえで、第一原発の事故収束と廃炉作業に全力をあげることを強く求めます。

 原発事故から6年目を迎える今、私たちは新たな決意をもって未来を見据えなければなりません。原発災害が収束していない福島では、課題はますます難しくなり、人々はさまざまな矛盾やたくさんの意見、多様な選択がある中で生活しています。それが福島の現状であり実態です。再びこのような事故・災害をこの地上にもたらさないために、立場や利害の違いを乗り越えて、互いに理解し尊重しあい、力を合わせて「原発のない福島」をつくっていきましょう。各界・各層のご賛同ならびに集会への参加を呼びかけます。

私たちの訴え

〇東電福島第二原発を廃炉とし、福島県では原子力発電は将来にわたり行わず、福島  県を再生可能エネルギーの研究・開発及び自立的な実施拠点とすること。 〇放射能によって奪われた福島県の安全・安心を回復し、県民の健康、とりわけ子ど  もたちの健やかな成長を長期にわたって保障すること。 〇原発事故に伴う被害への賠償、および被災者の生活再建支援を、国と東京電力の責  任において完全に実施すること。