「2016原発のない福島を!県民大集会」への参加を呼びかけます

 福島原発事故が発生してから4年9か月が経過しました。全国的には「記憶の風化」が進んでいるとも言われておりますが、福島県内で暮らす私たちにとっては日々の現実であり、「風化」などありえないことです。

10万を超える人々が依然として避難生活を続けており、居住条件の悪い仮設住宅での生活は4年以上にも及んでいます。復興公営住宅などへの移転が進んでいますが、「ご近所」がばらばらに分散し、人々が孤立してしまう問題が生じています。住宅が整えばよいと簡単に片づけられるものではありません。また公的な支援の乏しい、いわゆる「自主避難者」の窮状も深刻です。

これまでに、多くの方が命を落としています。「関連死者」数は1,900人を超えました。これほどの被害を生んだ公害事例は、世界的に見ても多くありません。

事故現場では、放射能汚染水の漏洩を抑止できない状況が続いています。海側遮水壁が最近完成し、また建屋周辺のサブドレンから汲み上げた地下水を浄化して海に放出する作業も行われています。一方で、溶け落ちた燃料の現況把握もままならず、現場処理は前途遼遠で、そこで働く人たちの放射線被曝も問題です。また、除染廃棄物の処理や指定廃棄物の処分についても、住民の生活および復興推進の上でも大きな課題となっています。

健康被害に関する県民意識の現状はなお厳しいものがあります。福島県の県政世論調査によれば、「長期にわたる健康被害」に不安を感じている県民の割合は、徐々に減ってはいるものの47.8%に上っています。とりわけ子どもの毎日の放射線被曝を心配する気持ちを多くの人がもちながら生活しています。

県民健康調査で子どもの甲状腺検査が一巡し、百人を超える子どものがんが検査で確認されました。これが原発事故による患者の「多発生」なのか、それとも前例のない全数調査による「多発見」なのかが重要な争点になっています。現在見つかっている甲状腺がんは「被曝が原因であるとは考えにくい」とするのが国や県の大方の評価ですが、現状は、まだ性急な結論を出す段階ではないと言うべきです。いずれにせよ、事故がなければ必要でなかった検査を受けなければならない県民の身体的・精神的負担は甚大です。
直面している重要な課題は「住民の帰還」です。事故後6年たつ再来年3月を期して、居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難を解除する方針を政府は示しています。被災自治体にとってみれば、避難指示が出ているために復興の緒に就くこともできず、また避難が長引けば長引くほど避難先で生活基盤を固める人が増え、帰還する住民が少なくなります。町村にとってこれは死活問題です。

 他方「早すぎる帰還」への懸念も強いものがあります。避難指示を解除する場合の放射線量の基準としては年間20mSvという数字しか存在しません。避難の基準を条件にするのはどう考えても理不尽です。さらに問題なのは、避難指示の解除が賠償や支援の打ち切りとセットになっていることです。

 楢葉町では9月に避難指示が解除されましたが、帰還した住民は3か月で5%でしかありません。川内村東部でも1年間で4分の1の帰還率です。住民が帰還しない理由は必ずしも残存する放射能汚染だけではなく、生活インフラや就業先、あるいは住宅の傷みなどさまざまな障害があるのです。

一方、福島でこのような苦難が続いているのをよそに、鹿児島県川内原発の再稼働がなされました。政府と原子力規制委員会が責任をなすり付け合うようにして、責任の所在が曖昧なまま事態が進行しています。まるで福島事故がなかったかのように、避難計画もまともに作られないまま、粛々と再稼働に向けた動きが進展していくのを、黙って見過ごすことはできません。

私たちの福島県民集会は、東電福島第二原発の廃炉を県民の総意とし、「原発のない福島を」をスローガンにしてきました。日本全国の原発の是非論は棚上げし、県内原発廃止の一点で共闘しようと考えたわけです。しかしだからといって再稼働問題について無関心ではいられません。それは被害を受けた者の社会的責任があるからです。

原発事故から5年の節目を迎え、私たちは新たな決意をもって未来を見据えなければなりません。今度のような事故・災害を再びこの地上にもたらさないために、立場や利害の違いを乗り越えて、互いに手を結び合いたいと思います。各界・各層のご賛同ならびに集会への参加を呼びかけます。

 

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uttae2015