東京電力福島第一原発の大事故以来、間もなく7年になろうとしています。時間の経過とともに記憶の希薄化が進み、先般の総選挙においても原発問題は、国民にとって優先度の高い政治的争点でなかったと言わざるを得ません。しかし福島県民にとっては依然として、事故の被害者救済と被災地の復興は最優先の課題です。
避難の長期化に伴う「関連死」は2,147人にのぼり(2017.3.31現在)、なおもふえ続けています。この2017年春に帰還困難区域を除く地域の避難指示がほぼ解除され、被災地復興は新段階に入ったものの、帰還した住民は数パーセントにとどまっています。まだ約5万5千人(2017.10現在)の避難者がふるさとを取り戻すまでには、さらに長い時間がかかるでしょう。また、避難指示解除と賠償金の打ち切りがセットになっていることから、被災者住民の間に新たな対立と分断が持ち込まれている現状も深刻です。
事故がもたらした県民への健康被害については、子どもの甲状腺がんに関心が集中していますが、避難者を中心に生活習慣病やうつ傾向の増大などさまざまな影響がすでに明らかに認められています。福島県産農産物や観光への風評被害はなお払拭されるにいたっていませんし、沿岸漁業はまだ試験操業の段階が続いています。いずれにせよ事故の被害は現在進行形であることを、全国の人々に知ってもらわなければなりません。
メルトダウンした原子炉の内部状況がだんだん分かってくるにつれ、廃炉作業の困難さも浮き彫りになっています。また現場でふえ続ける汚染水、および2,200万個といわれる県内のフレコンバッグの処分問題が、焦眉の課題になっています。汚染廃棄物の中間貯蔵施設への搬入、および県内指定廃棄物の最終処分場の稼動も開始されていますが、汚染物質の集中・固定化は被災地域への犠牲の押し付けの性格を持っています。
福島原発事故をめぐる裁判で注目すべき2つの判決が下されました。前橋地裁の判決(2017.3)でも、福島地裁で争われたいわゆる「生業訴訟」判決(2017.10)でも、国と事業者の過失責任が認定され、賠償が命じられました。今度の事故が「人災」であるという見方は、司法判断として定着しつつあるといえます。
しかしながら政府は、停止中の原発の再稼動に向けた軌道を敷こうとしています。原子力規制委員会は東京電力柏崎刈羽原発の安全審査に合格の判断を下しました。他方で、私たちが一致して求めている福島第二原発の廃炉については、政府は東電に、東電は政府に、責任を押し付ける形で相変わらず曖昧な態度を変えようとしません。私たちは県内原発の全基廃炉を求める署名運動を展開し、20万5千筆に及ぶ署名をもって政府と東電に迫りましたが、両者とも全く誠意ある回答をしませんでした。
県内原発を全て廃炉にせよというのは超党派の県民世論です。知事も事あるごとに政府に突きつけている福島県の最優先の政治要求です。とはいえ事故の風化と世論の沈静化、あるいは地方政治の変化をうかがいながら、なしくずしに再稼動に向かう可能性がないとはいえません。私たちは追及の手を緩めず、廃炉の実現まで声をあげ続けなければならないでしょう。
「県民大集会」は7回を重ねるわけですが、今回は被害が深刻だった楢葉町での開催になります。会場までのアクセスに難がありますが、ぜひとも盛大な集会にしたいと思います。関係諸団体、各位の積極的なご協力をお願いします。