当日の記録

leaf 福島からの訴え(5)

(高校生・郡山市)

私は第16代高校生平和大使の一人として、昨年の夏スイス・ジュネーヴにある国連欧州本部を訪問しスピーチを行ってきました。私は福島第一原子力発電所から約60km離れた郡山市に住んでいます。事故後、半年間の避難生活を送り、目の前に家があるのに帰れない苦しみも味わいました。“自分なりに悩み苦しんだ2年間を伝えたい。”そんな気持ちから、この平和大使に応募しました。福島を出て、日本を出て初めて分かったこと・たくさんの方と出会い、そして気づいた自分の無知さ。平和大使としての活動は私の視野を広げ、世界観を変えてくれました。

原発が何十基もある日本に私たち子どもは生まれ、あの時福島にいたという、ただそれだけのことで“被ばく者”というレッテルを貼られて、たくさんの課題を背負わされてこれから生きていかなくてはならなくなった。

事故が起こった今、国や東電に責任をとれとおとなたちは言うけれど、もし、そんなおとなたちが原発に反対してきたならば、こんなことにはならなかったはず。責任をとらなければいけないのは、原発に無関心だったおとなたちだと思う。私は今まで、そう思っていました。私はこのように発言する度に、無関心な大人たちに対して訴えてきました。その中で、決して率先して原発をつくってきた人達ばかりでないことも知りました。ご自分の身を削りながら反対し続けてきた方がたくさんいるということも長崎や広島を訪れた時、自分のこの目で見てきました。きっと今日この会場の中にも、原発に反対してこられ、そして今も反対している方が多くいらっしゃると思います。けれどもやっぱり、私たち子どもからすると、「なんで原発はあるの?」、「なんで止まらないの?」と思わずにはいられません。どうしても、この気持ちだけは拭いきれないんです。

そして今、私が思うのは、これからの世界は私たち若い世代がつくっていくんだということ。これから生まれてくる、原発が爆発した後の世界しかしらない子どもたちに、「食べ物を選ばなくちゃいけない生活も、外で思いっきり遊べない生活も決して当たり前じゃない。自然って本当はもっときれいなんだよ。」と教えてあげられるのは私たちしかいない、そのことに気がつきました。

確かに未来を担っていくのは私たち若い世代です。しかし、今を築いているのはおとなたちです。3年前の事故など、まるで無かったことにされようとしている今の福島は、おとなの目にどう映っていますか? 再び戦争ができる国へ戻ろうとしている今の日本は、おとなの目にどう映っていますか? 今、目に映っている世界をあなたの子どもや孫に誇りを持って譲り渡すことができますか? どんな世界を残してくれるのか、私たち子どもに対して恥ずかしくない態度でその道筋を示してください。

私の、高校生という立場は“子どもに近いおとな”であり“おとなに近い子ども”だと思います。私はあの事故を引き起こした一人のおとなとして、これから生まれてくる全ての命に責任を待ちたい。そしてフクシマに住む一人の子どもとして、理不尽なおとなたちに対し率直な疑問を投げかけたい。外から日本を見た今だから言えます。あの事故を経験した私だからこそ言えます。日本は原発に頼ってはいけません。福島に原発はいりません。

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